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◆◆とある国、とある集会場の厨房にて◆◆
野々村清美「ああ忙しい。17名もの飲み物と軽食を用意しなきゃならないなんて……。それにしても、ここ、どこかしら? 私ニューヨークにいたはずなのに……」
長谷川聡美「あら、初めまして。ニューヨークからいらっしゃったんですか?」
清美「ええ、そうです。こちらこそ、初めまして。お着物がよく似合ってらっしゃいますね」
聡美「ありがとうございます。小さいころから着てるので、着物のほうが動きやすいんですよ。それより、いったい何の集まりなんでしょうね?」
清美「さあ、何なんでしょうね。私も作者の柏枝から、突然呼び出されて、飲み物と軽食を用意するように、って言われただけなんですよ。で、私は洋食のほうを担当するように、って」
聡美「あ、私もです。私は『和食をお願い』って言われたんですけど。外国のかたもいらっしゃるみたいですね」
清美「あ、じゃあ、広瀬さんのお友達の刑事さんたちもいらっしゃるのかしら」
聡美「広瀬さんって?」
清美「私の同僚です。あ、私、旅行会社のニューヨーク事務所に勤務していて」
聡美「まあ、それは、素晴らしいですね。私はまだ、日本から出たことがなくて……」
◆◆同時刻、とある集会場の控え室◆◆
毛利直樹「今日こそ、拙者の晴れ舞台ですな。 なんか武者震いがしてきましたぞ。では、身なりの確認を。おめでたい日にふさわしく、たすきを源平ウエディングでもご披露したように、真っ赤な縮緬の帯を大きな蝶結びにしてみましたが、いかがでしょう?」
広瀬伸行「はあ……まあ、似合ってますが……。あの、おれ、『同時通訳をしろ』って作者に呼び出されたんですけど……」
曽我部綱彦「なに、君が通訳だって?」
伸行「ええ。あの……あなたは?」
綱彦「ぼくは、警視庁捜査第一課の曽我部警部補だが」
伸行「曽我部……?」
毛利(伸行に耳打ち)「あなた、警部補だなんて真に受けちゃいけませんよ。なにしろこの男は、あの曽我部物産の御曹司のくせに、冗談で刑事をやってるような悪党ですからな」
伸行「曽我部物産……?」(ってことは、父の上司の息子になるんだろうか……)
綱彦「なにをこそこそ話してるんだ?」
ダニエル・ドレイク「……日本語がさっぱりわからないや。ノブ、訳してくれる?」
伸行「ダニエル……なんでここに?」
ダニエル「副司会者をやれというアホな作者の命令でね。もうひとり、ツナヒコとかいう男も副司会なんだそうだけど」
伸行「ツナ……あ、曽我部綱彦なら、彼がそうだよ」
綱彦(金縁眼鏡を光らせて)「ぼくには通訳は不要だ。君も副司会者だって?」
ダニエル「みたいだね。君、オリーブ色が好きなのかい?」
綱彦「好みの色だが、なにか?」
ダニエル「いや……日本人で、そういった色のスーツを着ている人を見たのは初めてだから」
綱彦「そうだろうね。まあ、凡人には着こなせる色じゃないだろう。君の薄紫色の上着も、なかなか似合っているよ」
ダニエル「……それは、どうもありがとう。(必死に笑いを噛み殺している)」
毛利(伸行の通訳を聞いて)「拙者の、この真っ赤なたすきはいかがですか? おめでたい席にぴったりかと」
伸行「……(これも英語に訳さなきゃいけないんだろうか……)」
◆◆同時刻、とある集会場の第3集会室◆◆
阿部陽平「なんなんだ、この変な集まりは?」
長谷川文彦「ホームページの2万ヒット記念イベントだって聞いたけど」
阿部「ホームページって柏枝のだろ? ったく、おれたちを失業者にした張本人のくせに、なんで、おれたちが協力しなきゃいけないんだよ?」
文彦「いいじゃない。ぼくたちが出会えたのも、失業したおかげなんだから」
阿部「そりゃまあ、そうだが……」
築島朋也「先輩、急がないと遅刻しますよ」
吉家邦夫「別に遅刻したって、いいだろ。どーせ、あの柏枝の企画なんだしさ」
築島「……先輩……」
吉家「……なんだよ?」
築島「本当は出席者のリストが気になってるんじゃないですか? 例のお見合いの……」
吉家「え? ああ、長谷川聡美さんだろ? 別に気にしてなんか……。それに彼女は座談会の出席者じゃなくて、料理と飲み物担当なんだしさ」
築島「……無理しなくてもいいですよ」
吉家「バカ。別に無理してないだろ。それより、このリストにある長谷川文彦って……おれの記憶間違いじゃないければ、聡美さんの兄貴じゃないかな」
築島「お兄さんですか? お見合いの彼女の……」
吉家「たぶん……。見合い写真についてた身上書に書いてあった記憶が…。実際に会ったことはないんだけどさ」
築島「……先輩、やっぱり気になってるんじゃないですか」
吉家「しつこいな。気にしてないだろ。だから、さ……」
岡崎祐司「あ、吉家たちだ」
板倉恒之「ふん、あいつらも一緒か。しかし呉越同舟どころか、無茶苦茶な集会だな」
岡崎「いろいろな人がいて、面白そうだけどね」
板倉「たしかに、平凡なサラリーマンとは縁のなさそうなメンバーも多そうだな」
岡崎「そうだね。でも、こんなにたくさんのメンバーだと司会者も大変そうだね」
クラーク・デラウエア「日本人が多いな」
アンソニー・フォーセント「まあ、柏枝が日本人だから」
クラーク「言葉の問題はどうするつもりなのかね。通訳がひとりきりで大丈夫なのか?」
アンソニー「てんてこ舞いになりそうだよね。司会者は日本人みたいだし、副司会のダニエルは、日本語は挨拶程度みたいだし……。もうひとりの副司会の曽我部綱彦って、どんな人だろう?」
クラーク「さあな。柏枝が書くキャラだから、また変人かもしれん。第一、座談会といったって、議題はいったい何なんだ?」
アンソニー「僕もそれが不思議だったんだけど……。何の座談会なんだろう?」
遠野美雪「篤史、父さん。ほら、急いでよ。ぼく、こういう席に出るの初めてだから、なんかわくわくしちゃうな」
宮城篤史「……(溜息)」
遠野遼一郎「面白い顔ぶれだな。あいかわらず、いわくありげな連中ばかりだ」
美雪「ぼくが最年少かな。へへへ、なんか嬉しい。あ、そうだ、篤史。ばーちゃんにお弁当をつくってもらったんだけど、食べる?」
篤史「あ、いいよ。ここでも用意してるみたいだし、そのうち飲み物と一緒に出るんだろ」
美雪「篤史……せっかく、ばーちゃんが(泣きべそ)」
篤史「あ、わかった。わかった。じゃあ、食べよう」
美雪「ほんと? ええとね、今日はね、太巻き寿司なんだ。えーと、この切り口がお花の形になってるのが、いいかな。篤史、あーんして」
篤史「あのねえ……(遼一郎のほうを、ちらりと見る)」
遼一郎「……(無関心)」
美雪「篤史? ねえ、いらないの? あーんして」
篤史「わかったわかった。食べるよ。あーん」
美雪「はい。……どう? おいしい?」
篤史「あ、うん。おいしいよ」
シドニー・ホプキンス「なんなんだ、いったい。この変な集まりは。逮捕権があったら、全員、逮捕したいような連中ばかりだぜ」
ロッド・ハーシュ「ご機嫌ななめだな」
シドニー「当たり前だろ。いくらニューヨークの治安が一昔前に較べて良くなったといたっって、警察が忙しいのは変わらないのに、なんで、座談会なんてのに出席しなきゃいけないんだ?」
ロッド「……それが理由かい?」
シドニー「決まってるだろ」
ロッド「相変わらず、素直じゃないね。リストの『同時通訳』の誰かさんが気になってるくせに」
シドニー「……おれは気になんか……。言葉の問題があるから、通訳は必要だろうしさ」
ロッド「へえ……(笑いを噛み殺している)」
◆◆約20分後、とある集会場の集会室◆◆
(ここからは、伸行が通訳をしている、という前提のもとに話が進みます)
清美と聡美が飲み物を運んでくる。
毛利「皆さま、お待たせいたしました。では、これより、20000ヒット特別企画・座談会を開催いたします」
美雪「(拍手)毛利さん、かっこいい! 頑張って!」
毛利「ありがとう、美雪ぼっちゃま。では、皆さま、お飲物をお取りください。まずは、乾杯といきましょう」
綱彦「ちょっと待ちたまえ。座談会だろ? 披露宴じゃなくて。なぜ、乾杯をする必要がある?」
ダニエル「堅いことは抜きにしよう。いいじゃないか。飲み物で喉を潤したほうが、話しやすいだろう」
毛利「そうそう。まずは喉を潤すのが肝心かと。では、乾杯!」
全員(大半は、いやいやながら)「乾杯!」
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